2010年11月14日日曜日

お祭りのような調査

田中(2010)「お祭り騒ぎの調査」、『All About ETHIOPIA 』社団法人日本エチオピア協会
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必死で逃げ惑う牛を、村の男たちが取り囲んで捕まえようとしています。この光景を見ていた村人は、「お祭りの騒ぎのようだね」と、メジャー片手に必死に追いかける私に笑いながら話しかけてきました。
この日、私は村の人たちに協力してもらって、彼らが飼育する牛30頭の体長を測定していました。計られるのに慣れていない牛が、嫌って逃げ出したというわけです。エチオピアの牛耕を研究する私にとって、牛の体を計測することはたいへん重要なことです。体の大きさからその牛のもつ役牛としての能力がわかるからです。
この村で調査を始めた当初は、なかなか牛に触らせてもらえませんでした。私が尺をもってそっと牛に近づくだけでも、牛は嫌がり私を蹴り飛ばそうとします。それを見た飼い主も、「よせ!大切な牛に負担がかかるし、事故がおきたら大変だ!」と言ってとがめます。村の人々は「畑を耕し、作物を作って、それを食べることができるのは、牛のおかげだ」と語ります。いきなりやってきた調査者に、牛を触らせたくない気持ちは、当然といえば当然です。
しかし、半年以上村に住み込み、彼らと同じ物を食べ、農作業を一緒に行い、彼らの言語を使って対話を重ねながら調査を進めるうちに、少しずつ私の調査目的を理解してくれる人が増えてきました。牛の体を測る調査にも、「押さえておくから、蹴られないように素早く計れ」といって協力してくれるようにまでなりました。
調査の後は、協力してくれた人たちを村の酒場に招き、酒を振る舞います。仕事の後の酒はうまい!と笑いながらお酒を酌み交わします。「お祭り騒ぎ」は夜遅くまで続きます。

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