2017年6月3日土曜日

「こどものごはん」FENICSメルマガNo.34 2017年5月25日配信


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4.フィールドごはん
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「こどもの食べ物」
田中利和 (10巻執筆者、アフリカ地域研究)
エチオピア正教の祝日、村で屠った雄の羊の解体する作業を見せてもらっていた。友人のラブマは、ニヤニヤしながら、町の肉屋にはない、珍しく美味しい部位を食べさせてやろうと言った。彼がナイフで切りとり差し出してくれたのは2つの精巣だった。本当に人が食べるのか?絶品なのか?とラブマに問うと、ああ、でもこれは「こどもの食べ物」だといって、物欲しげにこっちをみている牧童のゲッチョ(13歳)を呼んだ。
ゲッチョはその精巣をいそいそと持ちさり、こっちへ来いと、私をかまどによんだ。そのまま2つの精巣を20秒程度、焚き木の中に直接くべて、表面を少しだけ炙る程度に焼いてすぐに取り出した。ナイフで薄切りにすると、中身は半生の状態だった。彼は唐辛子の粉をすこしつけて、一口で食べた。
続いて、美味しいから食べてみなと、私の口に入れてくれた。あたたかくプルッとした柔らかい食感で、噛むと口のなかでとろけ、やや独特のくさみも感じたが、その珍味は濃厚で、確かに「絶品」であった。蒸留酒でクイッとおっかけると最高だというラブマの助言に従うと、くさみはみごとに口のなかで中和され、心地よい余韻が口のなかに残った。
でも、どうしてこれが「こどもの食べ物」なのだろうか? ゲッチョは「精力がつくんだよ!」と嬉しそうだ。子孫繁栄への願いが、このご馳走に込められているのだろう。




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